【2023年最新】コロナワクチン接種後に血尿が出やすい人とは?

腎臓病

新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として、2021年よりワクチン接種がすすんでいます。接種後には発熱や倦怠感などの副反応が見られますが、ごくまれに尿に血が混じる“血尿(けつにょう)”を自覚する方がいます。なぜ血尿が出てしまうのでしょうか。本記事では2023年1月時点の論文や学会報告など、多角的に情報をまとめました。

本記事ではまずは、血尿について解説しています。記事の中盤から新型コロナワクチンと血尿についてまとめています。新型コロナワクチンと血尿について知りたい方は、記事の中盤からお読みください。

“血尿”ってなに?

血尿とはおしっこに血が混じっている状態です。

尿の見た目が赤くなる肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)と、尿検査でわかる顕微鏡的血尿(けんびきょうてきけつにょう)の2つのタイプがあります。
尿に混じる血液の量が多ければ肉眼的血尿に、少なければ顕微鏡的血尿となります。

血尿が出る原因

血尿が出る原因は以下の3つにわけられます。

  • 尿をつくる腎臓の病気
  • 尿の通り道である腎盂、尿管、膀胱、尿道の病気
  • 膀胱と尿道の脇にある前立腺の病気(男性のみ)

血尿の原因は数日で治るようなものから、腎炎などの慢性疾患、がんなどの悪性腫瘍まで多岐にわたります。尿に血が混じっているだけでは、なぜ血尿が出ているかまでは原因は特定できませんので医療機関で詳しく調べる必要があります。

血尿の症状

血尿が出るときには、痛みがある場合とそうでない場合があります。そのほかにも排尿時や腰・背中の痛みや違和感、発熱や残尿感、頻尿などの症状を自覚するケースも少なくありません。

例えば腰や背中の痛みや違和感では、結石や腎炎。発熱などでは腎炎や感染症。残尿感や頻尿でも感染症を疑います。

また痛みがない血尿の場合に多いのが、がんなどの悪性腫瘍です。膀胱がんの患者さんの8割は痛みのない肉眼的血尿で気づくともいわれています。

痛みの場所や程度、そのほかの症状である程度血尿の原因が予測できることもあります。血尿が出たら、体調に変化がないか注意するようにしたいですね。

血尿の治療

血尿の治療は原因によって異なります。

たとえば膀胱炎などの細菌感染の場合には、抗生物質の内服をします。

結石の場合には自然に石が排泄されるのを待つか、石を砕いて出やすくする処置をしたりします。

がんの場合にはがんの部分を切り取ったり、抗がん剤や放射線などで治療をおこないます。

コロナワクチン接種後に血尿が出やすい人の特徴

ここからが本記事の本題です。

コロナワクチン接種後に血尿が出やすい人はいます。国内・海外のさまざまな報告から、どのような人がコロナワクチン接種後に血尿が出やすいのかみていきましょう。

国内調査結果報告に基づく肉眼的血尿の傾向

2021年6月に日本腎臓学会がおこなった「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」アンケート調査では、以下が報告されています。1)

・ワクチンを接種後に肉眼的血尿が出た人がいる
・IgA腎症の患者のワクチン接種後に肉眼的血尿を呈するケースがある

調査の結果では肉眼的血尿が確認された患者のうち、70%はIgA腎症と診断されたことがある患者さんでした。
しかし、残りの30%は尿検査で潜血±と指摘されたことがあっても、IgA腎症と診断されてはない患者さんでした。コロナワクチン接種後に血尿が出たことで、腎臓が悪かったということが偶然わかった人も多いのです。

また、肉眼的血尿がみられた患者のうち一番多かったのは20歳代で、次いで30歳代、40歳代と続きます。そのうち女性が83%を占めていて、2回目接種後に症状が現れた人が70%にのぼることも報告されていました。

新型コロナワクチンが腎臓にどのような影響を与えるかは、まだまだ研究の途中です。日本腎臓学会の報告では、コロナワクチン接種後に一時的に尿所見が悪化しても、短期間で改善し深刻な腎機能障害には至っていないと記されています。

コロナワクチン接種後の血尿は心配ですが、未接種の人の重症化リスクはとても高くなっています。リスクとベネフィットをよく理解したうえでコロナワクチン接種の検討をする必要があるでしょう。

海外でも報告されるIgA腎症患者の血尿

コロナワクチン接種後のIgA腎症患者の血尿については、世界中で報告されています。代表的な論文を4つご紹介します。

IgA腎症の2人の患者における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2のワクチン接種後の肉眼的血尿
Negrea L, Rovin BH. Gross hematuria following vaccination for severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in 2 patients with IgA nephropathy. Kidney Int. 2021 Jun;99(6):1487. doi: 10.1016/j.kint.2021.03.002. Epub 2021 Mar 24. PMID: 33771584; PMCID: PMC7987498.

SARS-CoV-2 ワクチン接種後の肉眼的血尿および IgA 腎症の再燃の 1 例
Rahim SEG, Lin JT, Wang JC. A case of gross hematuria and IgA nephropathy flare-up following SARS-CoV-2 vaccination. Kidney Int. 2021 Jul;100(1):238. doi: 10.1016/j.kint.2021.04.024. Epub 2021 Apr 28. PMID: 33932458; PMCID: PMC8079938.

COVID-19ワクチン接種後の肉眼的血尿およびIgA腎症を伴う急性腎障害
Plasse R, Nee R, Gao S, Olson S. Acute kidney injury with gross hematuria and IgA nephropathy after COVID-19 vaccination. Kidney Int. 2021 Oct;100(4):944-945. doi: 10.1016/j.kint.2021.07.020. Epub 2021 Aug 3. PMID: 34352309; PMCID: PMC8329426.


ファイザー COVID-19 ワクチン接種後の 2 人の小児患者に肉眼的血尿として現れる IgA 腎症
Hanna C, Herrera Hernandez LP, Bu L, Kizilbash S, Najera L, Rheault MN, Czyzyk J, Kouri AM. IgA nephropathy presenting as macroscopic hematuria in 2 pediatric patients after receiving the Pfizer COVID-19 vaccine. Kidney Int. 2021 Sep;100(3):705-706. doi: 10.1016/j.kint.2021.06.032. Epub 2021 Jul 5. PMID: 34237324; PMCID: PMC8256683.

コロナワクチン後に血尿がでるメカニズムはわかっていない

日本腎臓学会の報告書には「コロナワクチン接種後のに血尿がでるメカニズムはわかっていない」と記されています。遅延型過敏症反応なども疑われていますが、はっきりとはわかっていません。

しかし”IgA腎症の患者さんにはコロナワクチン接種後に血尿が出やすい”ということはわかっています。

なぜ、IgA腎症の患者さんにはコロナワクチン接種後に血尿が出てしまうのか追加の報告が待たれます。

コロナワクチン接種後の血尿は“腎臓内科”へ

血尿が出た場合に多くの人は、泌尿器科を受診します。しかし、コロナワクチン接種後に血尿が出た場合には、IgA腎症などの腎炎である可能性が考えられます。
IgA腎症などの腎炎を専門に診断・治療するのは“腎臓内科”です。コロナワクチン接種後の血尿は、お近くの腎臓内科の受診を検討しましょう。

まとめ

コロナワクチン接種後に血尿がみられる人は、一定数報告されています。その多くがIgA腎症という病気を抱える患者さんです。多くの人は数日で症状が改善し、腎機能が悪くなることはなかったようですが、腎症以外にもなんらかの病気が隠れている可能性もあります。

ワクチン接種後に血尿が出たら、腎臓内科を受診し精密検査を受けることをおすすめします。

<参考資料>

1)「COVID-19ワクチン接種と肉眼的血尿出現の関連性に関する調査研究」アンケート調査結果のご報告 一般社団法人 日本腎臓学会

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