『国民の8人に1人は腎臓病』と言われるほど、腎臓病の方が増えています。80歳を超えると2人に1人が腎臓病と診断されており、新しい国民病ともいわれています。では、なぜ腎臓が悪くなってしまうのでしょう。腎臓を悪くしない方法はあるのでしょうか。現役透析看護師がわかりやすく解説します。
腎臓病ってどんな病気?
腎臓病は腎臓にある尿細管や糸球体と呼ばれる部分がもろくなり、尿を作ったり毒素を身体の外に排出したりする働きが低下してしまう病気です。
腎臓の働きの程度をあらわすeGFR(Estimated Glomerular Filtration Rate:推算糸球体濾過量(すいさん・しきゅうたいろかりょう))という値があります。
健康な人は100ml/分/1.73㎡程度あります。
しかし、何らかの理由で腎機能が低下し 「eGFRが60ml/分未満の状態」または「尿タンパクが3カ月以上続く場合」をCKD(chronic kidney disease:慢性腎臓病)と診断します。
腎臓病が進行しeGFRが15ml/分未満になった状態を末期腎不全と呼んでいます。末期腎不全になると、腎代替療法(じんだいたいりょうほう)とよばれる腎臓の代わりの治療が必要になります。
腎臓病の症状
腎臓病の代表的な症状には以下があります。
・尿が出にくくなる ・尿が全く出なる ・むくむ ・息切れや息苦しさを感じる ・血圧が高くなる ・食欲が低下する ・身体がかゆい・貧血になる |
一般的に、腎臓病のなりはじめには自覚症状がありません。
透析が必要になる末期腎不全になっても、まだ自覚症状がない患者さんもいます。腎臓病は静かに進行する病気なのです。
腎臓病の種類
腎臓病にはさまざまな種類があります。
そのため腎臓が悪くなるスピードだけでなく治療方法や服用する薬、採血結果や自覚症状も一人ひとり異なっています。
以下に、代表的な腎臓病の種類をまとめました。
1)慢性と急性
慢性と急性の腎臓病には次のような違いがあります。
慢性 | 急性 | |
病状の特徴 | 急激に症状が現れ、数日や時間単位で悪化する | 急激に症状が現れ、数日や時間単位で悪化する |
病状の経過 | 根本的な治療方法がない | 原疾患の治療で腎機能が改善することがある |
代表的な病名 | 糖尿病性腎症腎硬化症多発性嚢胞腎慢性糸球体腎炎 | 急性腎障害急性糸球体腎炎 |
2)原発性と続発性
原発性とは、腎臓自体に病気がおこったために腎臓の働きが低下し、腎臓病を発症した状態です。具体的には以下の病気があります。
・糸球体腎炎 ・間質性腎炎 |
続発性とは、何らかの病気の影響で腎臓の働きが低下した結果、腎臓病を発症した状態です。具体的には以下の病気があります。
・糖尿病→糖尿病性腎症 ・高血圧→腎硬化症 ・痛風→痛風腎 |
腎臓の働きは元に戻るの?
一度ダメージを受けた腎臓の働きが元に戻ることはありません。2023年時点で【自分の腎臓の働きを元に戻す治療方法】はないのです。
しかし、適切な治療や自己管理を続けることで、腎臓の働きを長持ちさせることはできます。
また、急性腎不全の場合は適切な治療を行うことで、ある程度までは腎臓の働きが回復する可能性がありますが、完全に元通りになるわけではないことに注意が必要です。
腎臓の働きを長持ちさせるための3つのポイント
腎臓を長持ちさせるために、どのようなことに注意したらよいのでしょうか?現役透析看護師が、腎臓の働きを長持ちさせるための3つのポイントをまとめました。
ポイント1:腎臓が今持っている力を大切にする
腎臓は一度ダメージを受けると、元に戻ることが難しい臓器です。そして、加齢とともに自然と腎機能は低下します。腎臓が今持っている力を大切にすることで、腎臓の働きを長持ちさせるようにしましょう。
ポイント2:腎臓の状態を把握する
腎臓が今持っている力を大切にするためには、腎臓の状態を適切に把握しておく必要があります。
職場や地域の健康診断では尿検査や採血検査で、必ず腎臓の働きをチェックしています。いま腎臓の働きがどのくらい残っているのか、どのくらいのスピードで悪くなっているのかを知っておくようにしましょう。
ポイント3:腎臓に優しい生活をする
腎臓を長持ちさせるために、腎臓に優しい生活を心がけましょう。具体的な方法を以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
・医師の診察と適切な治療を受ける ・減塩・蛋白制限をする ・糖尿病や心臓病を治療する ・血圧を正常範囲内にコントロールする ・ストレスをためない ・十分な休息をとる |
まとめ
腎臓病は令和の国民病ともいわれています。
しかし自覚症状がないケースもあるため、自分が腎臓病だと自覚していない人も少なくはありません。
また腎臓病の原因は多岐にわたります。腎臓の状態を知り適切な治療を受けることで腎臓を長持ちさせ、透析を先送りできることを知っておきましょう。
また本サイトを元に、腎臓についての正しい知識を獲得し、腎臓を大切にしていただければ幸いです。
<参考資料>