急性腎障害・AKIと診断されたあなたに知ってほしいこと

腎臓病

急性腎障害とは

急性腎障害とは、腎臓の働きが急激に悪くなったために全身にさまざまな症状が現れ、最悪の場合亡くなってしまう可能性がある病気です。

たとえば、敗血症という体の中にばい菌が入ってしまって急性腎障害を発症した患者さんの2人に1人は亡くなってしまうという報告もあるくらいなんです。

急性腎障害の原因

急性腎障害の原因は多種多様です。1つの病気が原因で発症する場合もありますし、複数の病気が原因で発症する場合もあります。

また急性腎障害の原因は、腎臓のどの部分に障害が現れているかによって、腎前性(じんぜんせい)・腎性(じんせい)・腎後性(じんごせい)の3つに分類されます。

腎前性腎臓に十分な血液が流れないために発症する
腎性腎臓の糸球体や間質・尿細管に何らかの病気が起こり発症する
腎後性腎臓で作られた尿が排出できないために発症する

急性腎障害になりやすいのはどんな人?

もともと腎臓が悪い人や、タンパク尿が出ている人ほど急性腎障害を発症しやすいといわれています。

その他に急性腎障害になりやすい人は以下のとおりです。

<患者固有の急性腎障害リスク因子>
・加齢
・男性
・黒人
・高血圧症
・糖尿病
・貧血
・慢性肝疾患・門脈圧亢進症の合併
・心不全,心収縮能の障害
・慢性閉塞性肺疾患
・末梢血管疾患
・悪性腫瘍
<病態に応じた急性腎障害リスク因子>
・重症疾患
・敗血症
・心臓外科手術
・主要な非心臓外科手術
・急性心不全
・造影剤への曝露
・薬剤毒性,腎毒性物質
・外傷

急性腎障害の症状

急性腎障害のなり初めには自覚症状がありません。さらに病状が進行すると、次のような症状が現れます。

・吐き気
・嘔吐
・食欲低下
・全身のだるさ
・尿が出なくなる
・むくむ
・尿毒素が溜まる
・カリウムなど電解質のバランスが乱れる

急性腎障害の診断基準と病期分類

急性腎障害は尿量やsCre(血清クレアチニン値)によって、3つのステージに分類されます。以下にご紹介する【KDIGO診療ガイドラインによるAKI診断基準と病期分類】は高い精度で生命予後の予測ができるとされ、急性腎障害の診断で積極的に用いられています。

【定義】
1. ΔsCr≧0.3 mg/dL(48 時間以内)
2. sCr の基礎値から 1.5 倍上昇(7 日以内)
3. 尿量 0.5 mL/kg/時以下が 6 時間以上持続

上記の定義1~3のうち一つでも満たせば、急性腎障害と診断されます。

sCr 基準尿量基準 
ステージ 1  ΔsCr≧0.3 mg/dL
or sCr 1.5 〜 1.9 倍上昇
0.5 mL/kg/時未満 6 時間以上 
ステージ 2sCr 2.0 〜 2.9 倍上昇 0.5 mL/kg/時未満 12 時間以上 
ステージ 3sCr 3.0 倍上昇
or sCr≧4.0 mg/dL までの上昇
or 腎代替療法開始 
0.3 mL/kg/時未満 24 時間以上
or 12 時間以上の無尿

上記のステージ分類のうち、sCreと尿量による重症度分類では重症度の高いほうが採用されます。

急性腎障害の治療

急性腎障害の治療は腎前性・腎性・腎後性で治療方法が異なります。

腎前性の急性腎障害では、腎臓に十分な血液が流れるように点滴や輸血をおこないます。同時に、腎臓に血液が流れにくくなった原因を治療し、血流を改善しなければなりません。

腎性の急性腎障害では、腎障害の原因を特定します。もしも薬が原因で急性腎障害を発症した際は、薬の使用中止が治療に直結します。

最後に腎後性の急性腎障害では、尿の流れを塞ぐ原因を排除しなければなりません。結石や腫瘍など原因によって治療方法が異なります。

また腎臓の働きが悪くなり老廃物や水分が体内に溜まってしまったケースでは、一時的に人工透析(血液透析)をおこなうこともあります。

まとめ

急性腎障害はもともと腎臓の働きが悪い人がなりやすいといわれていますが、感染症や心臓病、薬などの影響で誰もが発症する危険性がある病気です。

さらに高齢者は脱水になったり、血圧が下がり過ぎたり、造影剤や痛み止めなどの薬剤を使用したことで急性腎障害を発症するケースも少なくありません。

普段からご自身の腎臓の状態を把握し、腎臓に負担をかけないことも大切です。

本サイトを参考に腎臓病について正しい知識を持ち、急性腎障害を予防し、早期発見・早期治療に繋げていきましょう。

<参考資料>

1)AKI(急性腎障害)診療ガイドラン2016

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