腎臓病、なかでも慢性腎臓病は透析が必要なくらい腎臓が悪くならないと、自覚症状が現れません。そのため健康診断で異常を指摘されたとしても、多くの人がそのまま放置してしまいます。その結果5年後・10年後に先送りできたであろう“透析”が、すぐ身近に迫ってしまった患者さんも少なくないのです。本記事では自覚症状のない腎臓病の怖さを、現役透析看護師がまとめました。
腎臓病は自覚症状がない病気
腎臓は生まれる前、お母さんの胎内にいるときから死ぬ瞬間まで休むことなく働いています。どのような物でも働き続けていると少しずつガタがきて、働きが悪くなっていきます。腎臓も同様です。
しかし、腎臓はちょっとくらいガタがきても、働きが悪くなっても自覚症状が現れにくい臓器です。
腎臓の働きをあらわす“eGFR”(推算糸球体濾過量(すいさんしきゅうたいろかりょう)、estimated Glomerular Filtration Rate)という値があります。
元気な人のeGFRは100%ですが、半分、1/3になっても自覚症状がない人がほとんどです。
なかでも慢性腎臓病の患者さんは、年単位で少しずつ腎臓が悪くなっています。すると、患者さん自身が悪くなっていく体調に慣れてしまうため、症状に気付きにくいのです。
自覚症状がないとどうなるの?
一般的に自覚症状がない病気は、発見が遅れ気付いたときに手遅れになっているケースが目立ちます。
たとえば胸が痛い、お腹が痛いなど自覚症状があれば、体調を気にしますし病院にいこうと思うでしょう。
しかし自覚症状がないと、そのきっかけさえもないのです。
また、健康診断などで腎臓病の疑いがあるといわれても、症状がなければわざわざ病院に行こうとも思わないでしょう。
「大丈夫、大丈夫」
「たまたま、今回の結果が悪かった」
など、自分に言い聞かせて、いつの間にか腎臓が悪かったことなど忘れてしまうのです。
自覚症状がないと治療意欲に繋がりにくい
自覚症状がない病気は病院にいく、薬を飲むなどの治療意欲に繋がりにくいことがわかっています。
たとえば。怪我をして傷にばい菌が入ってしまったため、1週間分の抗生剤をもらったとします。本来であれば1週間飲み続ける必要があっても、数日で症状が改善したら、飲むのを辞めてしまう人もいるかもしれません。その後、症状がぶり返さず元気になれば「薬飲まなくても大丈夫だった」と、判断してしまうでしょう。
治療をしていた人でも同様です。
薬を1日飲み忘れた… あれ?何も体調変わらないな。
薬を数日飲み忘れた… 数日のまなくても何も変わらないな。
薬を飲まなくなった… ん?飲まなくても、全然大丈夫。あの薬はいらないんじゃない?
このように、自覚症状がない病気というのは薬を飲んでも飲まなくても体調の変化を自覚しません。
その結果、必要な治療を辞めてしまう患者さんが少なくないのです。
しかし体の中では、少しずつ腎臓病は進行しています。
そうして、もう元に戻らないくらい悪くなったところで、やっと自覚症状が現れ多くの人が医療機関に駆け込むのです。
腎臓病は適切な治療で透析を先延ばしにできる可能性がある
「腎臓病かもしれません」
「あなたは、腎臓病です」
「将来、透析が必要になるでしょう」
このように医師から告げられた患者さんの中には、受診や治療を辞めてしまうケースが後を絶ちません。
残念ながら腎臓病を完全に治す薬や治療方法は、2023年1月時点で腎臓移植以外にはありません。
慢性腎臓病の患者さんは適切な治療をしなければ、腎臓の働きはみるみるうちにゼロに近くなってしまうでしょう。
しかし、腎臓を悪くしている病気や生活習慣を改善し、少しでも腎臓の負担を減らすことができれば…。そのぶん、腎臓の働きを長持ちさせることができるでしょう。
適切な治療をしなければ、5年後に透析をしなければならないかもしれません。
適切な治療をすることで透析が10年後・20年後・30年後に先延ばしできれば、どうなるでしょう。
死ぬまで透析をしなくても済むかもしれないのです。
今ある腎臓の働きを少しでも長持ちさせることが、腎臓病治療の最大の目的なのです。
まとめ
腎臓病はよほど症状が悪化しない限り、自覚症状の現れにくい病気です。2023年1月時点で腎臓を元通りにする治療方法はないため、今ある腎臓を大切にする必要があります。
すこしでも腎臓を長持ちさせ透析を先延ばしにできるように、腎臓病や透析に対する正しい知識を持っておくようにしましょう。
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