人工透析患者の寿命は平均何歳?透析をしたら何年生きられる?

透析

透析をしていた人が、短期間で亡くなった話を聞いたことがあるかもしれません。時間や生活を制限され透析を始めても、長生きできないのであれば透析をしないほうがましだと考える患者さんもいます。
透析をすると長生きできないというのは本当なのでしょうか?世界中の研究報告や日本透析学会の最新データから考えていきます。

本記事は次のような方におすすめです。
・透析患者の平均寿命について知りたい方
・「透析を始めたら死んでしまうかもしれない」と思っている慢性腎臓病の患者さん

透析をしたら何年生きられる?さまざまなデータから検討してみる

「透析をしたら長生きできる」

「透析をしたら早く死ぬ」

これは、どちらも正解であり不正解です。

その理由は、誰がいつ亡くなるかは、誰にもわからないからです。

たとえば30~40代で慢性腎臓病以外の病気をお持ちでない方は、透析を始めても長生きできる可能性が高いです。その理由は残されているであろう平均寿命が長く、合併症を発症しにくいからです。

しかし、80~90歳で心臓病や糖尿病・高血圧などの病気をお持ちの方が透析を始めた場合には、平均寿命や体力的な点から10年・20年と長生きするのは難しいかもしれません。

これはあくまでも一般論です。

比較的若い方でも、透析を始めて数年で亡くなるケースもあります。

“透析をしたら何年生きられるか”は、誰にも予測できません。

しかし、数多くの患者さんのデータからその傾向を予測することはできます。

ここからは、透析をしない場合の寿命と透析をした場合の寿命や、透析をしていてもどれくらい生きられるのかについてみていきます。

透析をしないまま何年生きられるの?世界中の論文から考える

まずは末期腎不全、いわゆる透析が必要な人が透析をしないと、どのくらい生きられるのでしょうか。世界中の論文報告から考えてみます。

イギリスの研究結果では、末期腎不全の患者さんが透析をしなかった場合の平均余命は1.95年でした。

また、西ヨーロッパと北アメリカの高齢の末期腎不全で透析をしなかった患者さんの平均余命は6~23か月と報告されています。末期腎不全の患者さんが透析をしなければ、2年も生きられないようなのです。

透析をしたら何年生きられるの?日本の透析患者さんの実情

次に透析をしている人がどれくらい長生きしているか、平均透析歴についてみていきましょう。日本透析医学会は、毎年国内の透析患者さんのさまざまなデータについてまとめています。

報告によると、2021年末時点の慢性透析患者の平均透析歴は男性6.86年、女性8.45年、全体で7.40年でした。1)

この結果から、透析をしない人よりも透析をしている人のほうが平均で3倍は長生きできることがわかります。

透析をはじめてから何年生きられる?平均透析歴を紐解く

2021年末の報告では最長透析歴は52年8ヵ月です。半世紀以上透析をされている患者さんがいらっしゃることにはおどろきですね。

実は、透析歴の長い患者は年々増加しています。

長期的なスパンで平均透析歴の推移を見てみると、透析歴20年以上の患者は1992年末には1%以下でした。しかし2021年末には8.6%となり、長期透析患者は確実に増えているのです。

なぜ長生きの透析患者さんが増えているの?

透析歴の長い患者さんが増えている最大の理由は、透析医療の進歩です。

この15年でダイアライザーや透析機器などが大きく進歩しています。その結果より体に優しく、効率よく体のゴミを取り除けるようになりました。

さらに、高カリウム血症や高リン血症、腎性貧血などに対して効果の高い薬剤の開発がすすんでいます。加えて中長期的な副作用が少ない薬が開発されたことで、薬による合併症も減りつつあります。

また、世界中の研究報告からどのような透析をしたり、食生活に気をつけたりすれば透析患者さんが長生きできるのかも少しずつわかってきました。

このような理由が、透析歴の長い患者さんが増えている一因と考えられます。

健康な人と比べた透析患者さんの平均余命

最後に、健康な人と透析患者さんの平均余命についてみていきます。

今から約20年前の2003年。

日本透析医学会は透析患者の年代別の平均余命について調査しています。

男女別に比較したものを以下にまとめました。

<男性>

年齢(歳)透析患者平均余命一般人口平均余命
609.8721.98
657.8618.02
706.2414.35
754.7711.09
803.828.26

<女性>

年齢(歳)透析患者平均余命一般人口平均余命
6011.3127.49
659.0423.04
707.1118.75
755.6714.72
804.4311.04

いずれの年代においても、透析患者さんの平均余命は透析をしていない人と比べると半分以下になっています。

しかし、これはあくまで20年前のデータ。

先ほどご紹介したように、透析患者さんの平均透析歴は年々伸びています。

調査した時よりも20年経っていますから、今はもっと長生きできる透析患者さんが増えていると考えられます。

まとめ

透析患者さんは、透析をしていない人と比べると短命です。しかし、高齢者に限ってみてみると、透析をしない人よりも透析をしたほうが3倍は長く生きられたという報告があります。さらに透析医療の進歩により、透析患者さんの平均寿命は年々長くなっていることを知っておきたいですね。

透析をしない人生、透析と共に歩む人生。

あなたの人生を考える際に、ねふなびの記事がお役に立てればうれしいです。

1)2021年末の慢性透析患者に関する集計 わが国の慢性透析療法の現状 一般社団法人 日本透析医学会

2)Wong CF, McCarthy M, Howse ML, Williams PS. Factors affecting survival in advanced chronic kidney disease patients who choose not to receive dialysis. Ren Fail. 2007;29(6):653-9. doi: 10.1080/08860220701459634. Erratum in: Ren Fail. 2008;30(3):343. PMID: 17763158. 

3)Carson RC, Juszczak M, Davenport A, Burns A. Is maximum conservative management an equivalent treatment option to dialysis for elderly patients with significant comorbid disease? Clin J Am Soc Nephrol. 2009 Oct;4(10):1611-9. doi: 10.2215/CJN.00510109. Epub 2009 Sep 24. PMID: 19808244; PMCID: PMC2758251. 

4)日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況2005年12月31日現在 Ⅲ.2004年末調査項目に関する予後解析 表1 2003年 (平成15年)男性 透析患者 平均余命(生命表)、表2 2003年 (平成15年)女性 透析患者 平均余命(生命表)

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