【知っておきたい】自分に合う透析施設にめぐり合うポイント

知っておきたい
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透析が身近になったら決めなければならない“維持透析病院”。

維持透析病院の治療方針や医師・スタッフのレベル・専門性によっては、長期的な予後を左右させてしまうかもしれません。また合わない病院に週3回、生涯にわたって通わなければならないのは苦痛でしかないでしょう。

本記事では自分に合った透析施設にめぐり合うためのポイントを、現役透析看護師がまとめました。

透析施設は日本にどれくらいある?

日本透析医学会の調査によると、2020年末時点で全国に約4500施設あると報告されています。

本調査の対象となった透析施設数を見ていくと、都道府県によりその数には大きな差があることがわかりました。施設数の多い都道府県と、少ない都道府県を各5つずつまとめました。

透析施設数の多い都道府県

順位都道府県施設数
1位東京445
2位大阪325
3位神奈川271
4位北海道261
5位福岡200

透析施設の多い都道府県は人口が多い、もしくは、面積が広い傾向があります。

東京や大阪など大都市圏に限っていえば”1つの駅に2~3の透析施設がある”という地域もあります。

透析施設数の少ない都道府県

順位都道府県施設数
1位鳥取26
2位福井27
3位島根30
4位山梨33
5位山形35

透析施設の少ない都道府県は比較的人口が少なく、医療過疎地域とされている都道府県も少なくありません。透析施設が少ない地域では、”透析をするために隣の市町村まで行かなければならない”というのも珍しくないのです。

維持透析施設の種類と違い

医療機関には次の2つの種類があります。それは”病院”と”クリニック・診療所”です。

透析施設も例外ではありません。

それぞれの特徴についてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

病院クリニック・診療所
診療科数透析以外にも複数の診療科がある透析や泌尿器・腎臓などの診療科に限定されている施設が多い
病床数20床以上の入院病床がある入院病床がないか、あっても19床以下
受入れ患者の特徴合併症や重篤な病気を抱えているハイリスク患者が多い比較的若く、合併症がなかったり自分で通院できたりする患者が多い

病院?クリニック?診療所?みんなどこで透析を受けている?

透析患者さんはどのようなところで透析を受けているのでしょう。

日本透析医会の調査では、以下の傾向がわかりました。

施設の種類割合(%)
病院42.3
診療所(入院設備なし)40.6
診療所(入院設備あり)15.1
そのほか1.1
無回答0.9

病院で透析を受けている患者さんが一番多いのですが、入院施設のない診療所・クリニックで透析を受けている患者さんの割合との差はわずかでした。

大きな病院のほうが安心という患者さんは少なくありません。

しかし、国内の医療体制をみてみると大きな病院は急性期の医療を担い、地域のクリニックや診療所は慢性的な医療を担うようにシフトしています。

透析施設も例外ではありません。

シャント作成や導入は病院維持透析は系列の診療所やクリニックでというケースが増えています。そのため、診療所で維持透析を受ける患者さんも増える傾向にあるようです。

また“そのほか”と回答した患者さんは、自宅で血液をおこなっている透析患者さんだと考えられます。

透析施設を選ぶ5つのポイント

数多くある透析施設。

透析施設が少ない都道府県にお住まいの方は、必然的に選択肢が狭くなります。しかし、逆に透析施設の多い都道府県にお住いの方は、何を基準に選んだらよいか迷ってしまうでしょう。

週3回、生涯にわたって通う透析施設。

一体何を基準に選んだらよいのでしょうか。現役透析室看護師が、実体験をもとに透析施設を選ぶポイントを紹介します。

ポイント1 通院時間が短い

日本透析医会の調査では、透析施設への通院時間が30分未満だと回答した患者さんは83.7%にのぼりました。

暑くても寒くても、悪天候でも通わなければならない透析。通院時間が長いと、心身の負担につながります。

また透析後に疲れやすい方は、帰りはタクシーを利用することもあるかもしれません。透析施設が遠方の場合には、費用がかさんでしまうでしょう。

1日の時間を有効に使うためにも、体の負担を減らすためにも通院時間が短い透析施設がおすすめです。

ポイント2 通院しやすい

「住所では近いけど、公共交通機関を使うと意外と時間がかかる」

「乗り換えが不便」

「移動は階段ばかりで疲れてしまう」

一見すると通院時間の短い透析施設でも、実際に通ってみると意外と遠かったということもあります。

乗り換えがある場合には、とくに注意が必要です。

乗り換えが不便だったり、乗り継ぎが悪く待ち時間が長くなったり、階段を使わないといけなかったりするケースは少なくありません。

また、いまは自家用車で通うことができていても、体調が悪いときや年齢を重ねたときにはお一人での通院が難しくなってしまう可能性があります。

自家用車での通院を予定している方は、自家用車で通院できなくなる可能性も想定するとよいでしょう。

最近ではご自身で通院することが難しい方のために、送迎サービスが利用できる透析施設も増えています。

将来のことも考えて、通院しやすい透析施設を選ぶようにしたいですね。

ポイント3 生活と治療を両立しやすい時間帯を選ぶ

週3回通わなければならない透析。

月水金?

火木土?

午前?

午後?

いずれの曜日・時間帯で透析をおこなうかによって、生活への影響が変わることもあります。

プライベートを充実させるためには、生活と治療を両立しやすい時間帯を選ぶとよいでしょう。

ポイント4 透析施設やスタッフが自分に合うか

透析施設は、長時間滞在する場所です。

透析施設やスタッフが自分に合っているかは、ストレスなく透析を続けるためにとても重要です。

また、ホームページやSNS、口コミだけで判断するのはおすすめできません。面倒に感じるかもしれませんが、必ず足を運んで見学してください。

最後に“透析施設やスタッフが自分に合っているか”以外に、重視したいポイントをご紹介します。

ぜひ参考にしてください。

□照明の明るさ

□隣のベッドとの距離

□騒音やにおいは気にならないか

□ゴミは落ちていないか

□雑然とした印象はないか

□患者さんとスタッフとの関係性

□食事指導や運動療法、フットケアなどが受けられるか

□回診で医師と話す機会はあるか

ポイント5 何かあったときにすぐに対応してもらえる

シャントトラブルや合併症など、透析患者さんはさまざまな病気を発症するリスクがあります。

何かあったときに、円滑に適切な治療を受けられるのかは必ず確認しておきましょう。

また、診療所やクリニックの場合には、どこの医療機関と連携しているかもチェックしてください。

かかりつけ病院がある場合には、かかりつけに紹介してもらえるように伝えておくことも重要です。

まとめ

”ご自身にあった透析病院選び”は、負担なく安心して透析を受けるために欠かせない要素です。通院時間や距離、通院のしやすさだけでなく、医療機関やスタッフとの関係性、異常時の対応まで気にしてほしいポイントはたくさんあります。

実際に自分の目で見て、納得できる維持透析病院に出逢えるとよいですね。

ねふなびでは透析患者さんに役立つさまざまな情報をお届けしていますが、維持透析施設の紹介はしておりませんので、ご了承ください。

参考文献

1)2021 年度 血液透析患者実態調査報告書 公益社団法人日本透析医会 「血液透析患者実態調査検討ワーキンググループ」

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